vol.62 金

vol.62

フリーマガジン『フリースタイルな僧侶たち』がリニューアルします

フリーマガジン『フリースタイルな僧侶たち』は、宗派を超えた若いお坊さんが集まって創刊され、2020年で11年目を迎えました。

今では発行部数は毎号15000部を越え、全国400ヶ所以上の書店や寺院などで配布されています。さらには、朝日新聞社との共催で修行フェス「修行体験ブッダニア」を開催するなど、節目節目で編集メンバーを交代しながら、時代とともに新しい仏道の形を模索してきました。

そんなフリーマガジン『フリースタイルな僧侶たち』は、新しい編集メンバーのもと、リニューアルすることになりました。

リニューアルテーマ 「行脚、世界。」

令和は大変な時代になりました。新型コロナウイルスを発端に、貧困、格差、分断など社会問題が積み重なり、満たされない心が不安や欲望を駆り立て、時には他者を傷つけてしまうような、悲しい空気がこの世界を漂っているように思えます。

"誰もが優しくありたいのに、優しくなれない" 今はそんな時代な気がして、私たちフリースタイルな僧侶たちは、自分たちが僧侶でいることの意味や、自分たちの傍に仏教という世界観があることの意味を、今一度問い直そうと思いました。

浮かんだイメージは、マガジンの中をさまざまな思想・宗教・文化が飛び交い、その境界がグラデーションで繋がって、一つの生態系を成しているような紙面でした。

一つの世界観で語れるほど、現代は単純ではありません。だから、ただ一方向的に仏教や僧侶の活動を伝える情報誌ではなく、世界にあまねく存在する他者と、フリースタイルに踊れるダンスフロアのようなマガジンであってほしいと思いました。

他者とのダンスを通して、世界がバラバラであること、それでも世界が一つにつながっていることを感じられる、そんなこの世のフリースタイルを願うフリーマガジンを作るべく、リニューアルに至った次第です。

掲げたテーマは「行脚、世界。」です。

「行脚」とは、修行のために僧侶が各地を歩いて旅をすること。「世界」とは、仏教ではグローバルの意ではなく、それぞれが持っている世界観のことを意味します。

人はそれぞれに世界を持っています。同じ蛙を見ても「ただのカエル」と感じる人もいれば、「古池や蛙飛びこむ水の音」と感じる人もいるように、私たちが見て、聞いて、触って、思える「世界」とは決して一つではなく、感性によって無限に存在しています。

その感性を大きく構成するものが、思想・宗教・文化です。誰もが大なり小なり、それぞれに思想・宗教・文化を持っていて、星と星が重力で引かれ合うように、他者と影響を与え合いながら、自分の世界を揺らして生きています。人だけではなく、仏教という2500年の年月を超えて今私たちの傍にあるものや、哲学や作品といったものも、この”他者”の一つです。

他者のリズムを知って、初めて自分のリズムに気がつけるように、私たちはまだ何もこの世界のことを知りません。「行脚、世界。」に込めたのは、そんな自他の境界線を超えながら、”世界の揺らぎ”を楽しんでいく姿です。

2020年、『フリースタイルな僧侶たち』は、思想・宗教・文化の枠をフリースタイルに飛び超えて、現代のイシューにつながる多様な世界観を紡いでいくフリーマガジンに生まれ変わります。

『フリースタイルな僧侶たち』とともに、不要不急の行脚の旅へお参りいただければ幸いです。

新しい編集部メンバー紹介

リニューアルにあたり、編集部に新しいメンバーが加わりました。現在、20代の僧侶を中心に新体制で紙面づくりを行っています。

ページ数を増量し、今までの『フリースタイルな僧侶たち』の読者の皆さまにとっても、さらに読み応えの増したマガジンづくりを目指します。

稲田ズイキ -編集長-

1992年、京都・久御山町にある浄土宗・月仲山称名寺生まれ、副住職。同志社大学法学部を卒業後、東京・渋谷のデジタルエージェンシーに入社。2018年に作家・編集者として独立し、いろんなコンテンツを企画しながら今の時代の僧侶の在り方を模索している。「集英社よみタイ」では仏教の言葉を現代カルチャーで翻訳するコラム連載、「幻冬舎plus」では半年間の出家ならぬ家出の日々をエッセイ連載。2020年9月よりフリーマガジン「フリースタイルな僧侶たち」の編集長に就任。

https://twitter.com/andymizuki

秦正顕 -アナリスト-

1994年、北海道札幌市にある祐雲山晟徳寺生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、大手広告代理店入社。2019年末よりベンチャー企業に転職し、データを活用したメンタルヘルスケアアプリの企画・開発を行う。お寺に生まれた身として、一般企業で働きながら仏道を実践する道を模索中。フリスタがきっかけでお寺を継ぐことを決心したくらいのフリスタの大ファン。

https://www.facebook.com/masaaki.hata.920/

福井裕孝 -デザイナー-

1996年、京都・八幡市にある浄土宗念佛寺の次男として生まれる。現在は演出家として、京都・東京の二都市を中心に舞台作品の創作と発表を行う。主な作品に、観客が家にあるモノと一緒に来て、モノと一緒に観て、モノと一緒に帰る『インテリア』(2020)、机の上を舞台に俳優が指で演劇を上演する『デスクトップ・シアター』(2019)、劇場の箱馬を他人の家に送って預かってもらう『シアター・マテリアル』(2020)など。公益財団法人クマ財団クリエイター奨学金第二期生。

https://www.fukuihirotaka.com

リニューアル創刊号のテーマは「地獄」

リニューアル創刊号のテーマは「地獄」です。そう決めたのは、近頃のメディアや作品、SNSで使用される「地獄」という言葉の頻度に興味を持ったからでした。

「マジで地獄だ」
「地獄みたいな空気だった」

私たちは、この不条理な現実を「地獄」という言葉を通して見ることが増えました。

そもそも地獄とは、日本では約1000年前に仏教を原典に広まったことを発端に、地獄絵図や地獄草紙など、様々な文化体系にまたがって浸透している世界観です。

今回、行脚したいのは、現代を生きる私たちが見ているこの「地獄」についてです。

今、1000年の時を超えて「地獄」という言葉を選ぶ私たちの心には何が映っているのか?
そこに私たち自身の感じる「地獄」のような現実と上手く付き合っていくヒントがあるのではないか?

地獄を楽しむクリエイターのインタビューや、お笑い芸人による地獄についての論考、SNSに遍在する地獄との付き合い方、僧侶と地獄研究家との対談など、多角的な切り口で地獄の解像度を上げていきます。乞うご期待ください。

【地獄募集】あなたの地獄をおしえてください

そんな地獄から始まる記念すべきリニューアル創刊号の58号ですが、一つ皆さんにお願いがあります。

もし「地獄」を感じたことがあれば、私たちに教えてもらえないでしょうか?

「面倒くさい上司との飲み会」
「一人でUNOしているの家族にバレた」
「グループLINEに自撮りを誤爆した」
「全身ユニクロでユニクロへ行く」
「満員電車に足を踏み入れるときにいつも『地獄かよ』って思ってる」
「推しが炎上した」

投稿いただく地獄は、どのような内容でも問題ありません。

現代の地獄を分析する際の大事な資料として使用するとともに、表紙に使用させていただきたいと思います
リニューアル創刊号の表紙を、たくさんの方の地獄で染め上げ、地獄の果てからスタートを切ってみたく、何卒ご協力いただければ幸いです。

投稿は下記のフォームからお願いいたします。

※複数投稿可
※投稿してくださった地獄はすべて最新号58号の表紙に匿名で記載する予定です
※あまりにも公序良俗に反するとみなした地獄は掲載を見送る可能性があります
※皆さまの地獄が印刷された表紙のフリーマガジン58号は、僧侶が責任を持って恐山の地獄谷に持っていき、しかるべき法要を通して供養した上、全国に配布する予定です

もし万が一、フリーマガジン『フリースタイルな僧侶たち』の制作に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、お問い合わせまでご連絡ください。

これから新しく始まる『フリースタイルな僧侶たち』を末永く応援いただけますと幸いです。